平成15年 11月定例会 農林水産委員会 - 12月11日−01号

◆溝口委員 この条例(人と環境にやさしい長崎県農林漁業推進条例)については、私も賛成ではあるんですけれども、やはり規制だけにとどまらず、生産者のことから消費者のことまで考えた形での取り組みをされているということで、この施行に当たっては、今から説明にも行かれると思いますけれども、例えば、安全な魚をつくる段階でどういうような生産をしていけばいいとか、そして、ここに陸上養殖のことも書いてありますが、特に今後は陸上養殖に発展する可能性があるのではないかと私は思います。陸上養殖は資本がものすごく要ると思うんですよ。だから、そのような形をとるとなった時に、官としてどのような補助ができていくのかどうか。来年4月から施行されますが、その辺の生産者に対する予算的なものが全然見えてこないんですよね。そして、消費者に対するPR、ネットワークづくりもどのような形でやっていくのかということも生産者に説明していかないと、これを守っていく段階で、守っていくとは思うんですけれども、そこら辺の予算づけとしては、先ほど奥村委員もちょっと言われましたけれども、施行に当たってのそういう予算づけも考えていただきたいなと思うんですけれども、そこら辺についてはどのように考えておられるんですか。
◎濱口水産振興課長 具体的に陸上養殖を例にとってご説明させていただきます。
 ご案内のとおり、平成11年から14年までマリノフォーラム21が行った閉鎖循環式の陸上養殖のシステム開発に県も参画してやってまいりまして、それを踏まえまして、今後、自然海水を導入したかけ流しといいますか、そういった陸上養殖の方向も含めまして業者の方々と具体的に検討していきたいということでございます。
 それで、平成15年度から陸上養殖施設の導入について既に進めておりまして、具体的には陸上養殖振興対策事業ということで今進めております。
 先ほど申し上げました閉鎖式循環システム開発の実施地区である松浦地区、あるいは島原地区を中心としまして、関係者との意見交換をやりながら進めております。コスト的にはかけ流しの方が安うございますので、その辺からやりたいという方がいらっしゃれば、この事業でも支援をしていくという考えで、今、具体的にその施設整備についてもあるところで検討しております。
 また、そういった経過を踏まえまして、今後、地域で意欲がある方がおられれば、いろんな制度事業を活用したり、あるいはまた新たな支援のあり方についても検討してまいりたいと思っております。
 もう1点、長崎型新水産創出事業という、意欲ある漁業者、これはグループを支援する事業でございますが、陸上養殖につきましても、土地をいろんな形で利用したり、あるいは温排水を利用したりとか、また別のアイデアがいろいろ出ております。そういった中では新たな取り組みでコストがかかる、リスクがかかるということがあれば、そういった活用支援も含めまして検討してまいりたいと思います。
◆溝口委員 陸上養殖の場合は、かなりのコストがかかるのではないかと思うんですけれども、先ほども朝長委員から言われましたように、コストが高くても売れる体制というものを、生産者もそれは努力して出荷の場合はやっていくと思うんですけれども、官民一体となって、中山委員が言われましたように、官が広報活動を積極的にやっていただきたいと思うんですよね。特に、フグについてはいろんな問題がありましたけれども、トラフグは長崎県のブランド製品になれると私は思うんですよ。この規制を守って安全な魚をつくっていくと思いますので、ぜひ行政の皆さん方も積極的に、消費者に対する宣伝活動、ネットワークづくりをぜひしていただきたいなと、このようにお願いしておきます。
◆溝口委員 先ほど山口委員からコイのヘルペス症についての質問があったんですけれども、陸の方から水が流れていくということになれば、海に対しての影響はどのように考えておられますか。
◎小坂総合水産試験場長 今のところ、わかっている範囲では、コイヘルペスウイルスはコイ以外には感染しない、もちろん人間にも感染しない。今お尋ねの海の魚には感染しないという養殖研究所の見解でございます。
◆溝口委員 コイだけにということでございますけれども、コイのヘルペスに対する薬品等は開発できているんですか。
◎小坂総合水産試験場長 薬品、治療法は、今のところ、全くございません。
◆溝口委員 コイの方はいいんですけれども、この間からトラフグのエラムシの問題で試験費が補正予算の中でついていたと思うんですけれども、そこら辺の研究の成果について聞かせていただきたいと思います。
◎小坂総合水産試験場長 今のお話のように、6月議会で補正予算をつけていただきまして、試験を8月から実施いたしました。現場としましては、鷹島阿翁漁協で実施いたしました。
 6月に概要のお話をしておりましたが、1つはトウガラシ等のカプサイシンを餌の中に混ぜて免疫力を高めて生育をさせていくと。その免疫力でエラムシがつかないようにしていく、強い魚をつくるということが1つ。
 もう1つは、いけすの内側にエラムシの卵を付着させる網を設置して、それに付着させながら卵を回収していく。
 この2つの方法で試験をやりますというお話をさせていただきました。その結果についてご報告いたします。
 試験については、現場の試験は8、9、10月の3カ月で終了いたしました。今、試験場内で引き続き試験をやっている部分がございます。これはカプサイシンの餌に混ぜる率、何%が一番いいかという方法と、その他のニンニクとか生薬についての試験が一部残っておりまして継続中でございます。
 当面、現場の状況だけのお話をさせていただきますが、まず、現場で全く何もしないトラフグのいけすと、その横にトウガラシだけ、いわゆるカプサイシンを餌に混ぜた試験区の比較を1区、もう1つは卵を回収する網とトウガラシを一緒に食べさせた試験区と何もしない試験区、もう1つは何にもしないものと回収網だけをした3つの試験区で実施をいたしました。
 結論といたしまして、トウガラシについては成果が非常に出ました。トウガラシだけを与えた区の生存率、これは8月に100入れた魚が、全く何にもしなかったものが62%まで落ちました。トウガラシを食べさせたものが69%でとまりました。そこに約7%の生存率の違いが出ました。
 それから、成長でございますが、これは非常にいい成長が起こったんですが、いわゆる何にもしなかったものが、8月に入れた魚が10月に157グラムになりました。トウガラシを食べた区が190グラム、そこに33グラムの差が出ました、これは平均ですね。率にして大体2割ぐらいの魚体重の増加が出ました。いわゆるトウガラシを食べさせたところの試験区の成長が非常によかった、こういう成果が出たわけでございます。
 もう1つ、卵を回収する網を設置した区でございますが、卵を回収する網は、内側に網を入れますので、水槽の容積が狭くなるという1つの結果がございます。したがいまして、8月、9月は成長が非常によかったんですが、トウガラシと同じように、120%以上の成長率になりました。10月になって成長ラインが若干とまりました。おかしいなと思っておったところ、いわゆる余り太り過ぎて過密な状態になったと。
 こういうことで、我々は試験が終了するまでは分養はしないという形で試験をいたしましたので、8月、9月の成長でもって成長が非常にいいというデータが出ましたので、これはこれでそれなりに成果があったということ。
 ただ、回収網の卵については、現在、分析機関で、どれだけの卵が回収できたかということを継続して分析中でございます。
 総じて、カプサイシンとエラムシの卵の回収の方法というのは非常に効果があるのではないかということで成果を得ましたし、地元の漁業者も実感として非常にいいなという感触を持っておられますので、ここら辺をこれからデータとして整理をしまして、でき得れば、今、試験場内でやっておりますカプサイシンの濃度の比率のこととあわせて、1つのマニュアルにして来年度は漁業者の方に還元していこうかなと、こういうことで考えております。
 以上でございます。
◆溝口委員 成果があったということで、見通しが少しは明るくなったのではないかという気がいたすわけです。熊本の方が1年たって、今、薬品が開発されたと聞いていたんですけれども、そこら辺の成果については何も聞かれていないんですか。
◎小坂総合水産試験場長 現在、農林水産省の方で審査中でございますので、はっきりとした外部への公表はございません。ただ、聞き及ぶところ、順調に審査が進んでいると、こういう形でございます。担当県等のお話を聞いても、順調に進んでいるので、自分たちとしては来年使えるようになればいいがなと、この程度の感触で我々はつかんでおります。
◆溝口委員 トラフグについては、今日、条例も食の安全・安心ということで定められましたので、絶対にホルマリン等、指定薬品ではないものは使っていけないと思っております。
 そのような形の中で、少しでも明るい兆しが見えてくればいいんですけれども、行政の皆さん方もご存じのとおり、今、漁業環境、漁協は大変厳しい状況なんですね。その中で信用事業の自己資本比率が4%以下になったら信用事業はやってはいけませんよという漁協が何件も出てきていると思うんですよ。
 そのような中にあって、行政として、今後、漁業経営に対する指導をどのように考えていこうとしているのか、聞かせていただきたいと思います。
◎広沢漁政課長 第1点に自己資本比率の話でございますけれども、14年度末現在、92漁協のうち68漁協が信用事業を実施しております。その中に自己資本比率が4%を切った漁協はありません。
 ただ、系統の自主ルールといたしまして、これは農林中金を頂点としまして系統での指導方針がございますが、健全経営を目指すために自己資本比率を10%以上にもっていこうとの取り組みがなされており、それに向けて財務改善に取り組んでいるところはございます。
 総じて、ご指摘のとおり、今、漁協は特に水揚げの不振その他で経営的に苦しい状況にあるのは、指摘されているとおりであろうと思います。
 私どもは、1つは、漁業振興の地域における推進母体は漁協であるだろうという観点から、これまで1市町村1漁協という合併方針で平成8年度以来取り組んでまいりましたけれども、平成12年度からは、さらに広域的な、いわゆる広域合併という形での指導というか、系統と一体となって取り組んでおるところでございます。
 具体的なこの取り組みにつきましては、合併そのものをどうやっていくかという段階論がございますが、各地域において、また10月に下五島では合併研究会というものが立ち上がっております。その段階を経まして正式に合併推進協議会といった形での展開になっていくだろうと思っております。
 私どもは、一刻も早く、そういう形での広域合併が進むように合併推進協議会の立ち上げに対して支援するような形での支援を考えている、こういうことでございます。
◆溝口委員 漁政課長、今、4%以下の漁協はありませんと言われましたけれども、今年も、そういう事態になって信用事業を放棄しなければいけない漁協も出てきております。今年出てきておるでしょう、実際に今指導しておられるでしょう。
 そういうことで、大変厳しい状況だと思います。先ほど合併ということが出ましたけど、指導強化をしていきたいということですけど、今、合併について基金の方は取りやめて進んでないんですよね。どういうふうな形で、ただ指導的に合併をしなさいというだけでいいのか。市町村合併は国が特例債を定めてからぴしっとした形で指導をして市町村合併を促しているんですよね。
 県の方として、漁協の合併ということに対しては、今は強化をするために合併をやっていかないといけませんよというだけの指導と私は思っているんですけれども、そこら辺についてどうでしょうか。
◎広沢漁政課長 ご指摘のとおり、前回の第7次合併推進基本方針の際には、財務格差が大きいということで一定の支援スキームをつくりました。第8次に入りまして、その点は一定の役割は終えたという形で、現在は、処理すべき債務がある場合は国の一定の制度を活用しながら、利子補給の制度を活用しながらやっているということでございます。
 これからどこまで支援が許されるのか。とりあえず、私どもとしてはそういう形で各系統団体とも連携しながら、人的な面での支援、あるいはそれに基づいて新たに事業を展開する場合には、さらに事業展開に対する支援を考えながら合併推進を図っていきたいというふうに思っております。
◆溝口委員 漁協の強化をしていくためには、今後、合併しかないと思うんですけれども、利子補給とかそういう問題じゃなくて、やはり水産振興につながるような合併の方法を考えていかなければいけないし、後継者もだんだん少なくなっている状況なんですね。だから、当初やっていた基金を復活させて何らかの形で、県の指導として、例えば広域合併をした場合にはどういうような政策をやりますよとか、そういうことも少しは考えていかないと合併は進んでいかないのではないかと思っております。
 それから、信用事業を放棄する組合は、今からもだんだん増えてくるような気がいたしておりますので、そこら辺についても行政としての指導をどのような形でやっていくか、真剣に取り組んでいただきたいなと、このように思っております。
 以上です。